立川談志に食道がん発見さる
 いつもこの欄で談志は丈夫だと言い、先々週もピンピンしていると書いたばかりなのだが、その談志にがんが見つかった。食道がんである。いやご安心あれ、まだ、豆粒ほどにも育ってない小さな小さながんなのである。もちろん開胸手術には及ばず、入院も一週間、メスの付いたファイバースコープでの処置らしいのだが、それでもがんはがん。一門は「談志ひとり会」の楽屋に集結した。
 高座の談志は開口一番「オレはがんだから、今日で見おさめになるぜ」と言い、いつにない迫力の「木乃伊(みいら)取り」と「富久」の二席を演じた。弟子は「こんな元気ながん患者は見たことねえ」「ケチだからがんも小さい」などと安堵したのだが、さすがに今回はないと思った打ち上げがあったのには驚いた。
 いつもの店へ流れ、談志はよくしゃべった。早期発見は検診のおかげであるという。談志は異常なほどの医者好き病院好きで、暇があると検査をしていて、姿がみえなかったら病院を探せというくらいの検査マニアなのだが、その過程でがんが発見されたという。しかも「前田外科で」であるそうな。一同が驚くと、こんなことがあったらしい。あるとき談志は、逸見政孝氏の件で袋だたきにあっている前田外科を週刊誌で励ました。すると前田外科から分厚い封筒の礼状が届き、そこから前田外科通いが始まったのだという。われら一同は「因縁ですね」という言葉をかみ殺し、「それこそ縁というものですね」と言ったのだった。
 談志は好物のハイボールをスコンスコン飲んでいた。
 帰り道、談志はがんであることを知って飲んでいたが、知らずに飲んでいる人は多いのだろうなと思い当たり、ドキリとした。そして自覚症状が出た時には‥‥とおびえ、今私は過去に知り得た医者のだれ彼を思い出し、早めのアプローチをと考えているのだ。

   立川談四楼
日刊ゲンダイ9月18日号より全文掲載