幻の名著「石油ポンプの女」いよいよ文庫化!!
 今回は、自著の宣伝であります。なんだ、宣伝かとガッカリは無用です。読者諸兄にとって有益な本なのですから。
「石油ポンプの女」(新潮文庫 本体400円)がそれなのですが、5年前、単行本化された折りに「幻の名著」と言われたものがいよいよ文庫化、装いも新たにお目見えしたのです。
 昭和45年、読者諸兄は何をしていましたか。そう、大阪万博、三島由紀夫割腹自殺の年…であります。落語界はこの年、最後の黄金期を迎えていました。寄席にも客が入り、志ん生、文楽、円生が健在だったのです。
「石油ポンプの女」は、この年に入門した男たちの物語です。せめて10年前に入門していたら…という遅れてきた男たちの物語です。
 現状を見れば、彼らがどんな前座、二つ目時代を送り、いかなる真打ちになったか容易にわかるはずです。そうです、彼らは平成12年の今も売れないのです。しかしダメなヤツらですが、気のいい連中です。売れなくても健気(けなげ)にやっているのです。区議選の応援をしたかと思うといきなりアフリカへ飛び、ジャングルの中の日本人を前に一席。歌手デビューをもくろんだかと思えば、とんでもない「石油ポンプの女」に引っかかる。リッチでも売れっ子でもないけど、とりあえず前向きに生きている……どうですお父さん、ダメなところ、ウダツの上らないところがあなたに似ていると思いませんか?
 今回、花岡道子という画家が素晴らしい絵をかいてくれました。表紙の絵がそれです。
「石油ポンプの女」の意味は、あえて説明しません。読んでニヤリとしていただくために。
 消費税ともに420円、さァ書店に急ぎましょう。で、こう唱えてください。「遠くの難民より、近くの芸人へ」と。どうです、いい合言葉でしょう。えっ、早速のお買い上げで。何と2冊も。おありがとーござい。

   立川談四楼
日刊ゲンダイ4月5日号より全文掲載