立川流家元は鮭を丸ごと食いつくす |
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師走である。お歳暮の季節である。今年の門弟から家元へのお歳暮は、冷蔵庫と決まった。家元のリクエストはこのところ留守電やカーテンであったが、久々に重量のあるものに決定、年番が先日カタログを届けたところなのである。 家元は、もらい物が多い。今回冷蔵庫が1つ増えるのであるから、それらにも十分対応できるはずで、ナマ物それも冷凍の必要のある場合でも大丈夫、数年前には業務用とでも言うべき巨大な冷凍庫を贈っているのであるから。 家元は冷蔵庫と冷凍庫をうまく使い分ける。しかし旅が続き、冷蔵庫から冷凍庫へ移し忘れることがある。それでも家元はそれが少々いたんでいようと平気で食う。とにかく捨てるくらいなら腹っくだしした方がいいという63歳なのである。 鮭を1匹もらうと、家元はこれを余すところなく食う。まず身を食う。次に頭をしげしげと眺め、氷頭ナマスの作製にかかる。一度ご相伴にあずかったが、なかなかの職人技であった。 当然骨やヒレが残る。家元はこれを庭で干すのである。前座2名が猫の見張り役として動員され、干しあがれば、手にカアンヅチをもたされた彼らが骨やヒレを粉々に砕くのである。これにゴマ塩、刻みノリ、干したミカンの皮などが調合され、談志フリカケの完成となるのだが、家元はこれを常に携行し、テレビ局や落語会で出される弁当、いや、手銭での食堂やレストランでさえそれを取り出してはご飯にかけ、これ見よがしにウメエウメエとホオ張るのである。私も何度か恵んでもらったが、香ばしくてケッコウな味であった。そして私はその都度、フリカケにささやいた。「鮭クン、これでキミも浮かばれるね」と。 さて冷蔵庫であるが、家元はどういう機種を選ぶのであろうか。志の輔を除いて貧乏な一門は、ただただ小さな冷蔵庫をと願ってやまないのである。 立川談四楼 |
日刊ゲンダイ12月2日号より全文掲載 |