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2/6 談志 現代人もほとんど納得しないでしょ、憧れはあっても。おれはどっちかというと物理はあんまり信用しないから、そういうことはあり得るだろうと思ってるけど。西丸 科学教の狂信者というのには限界があって、これ以上やると自分の立場がぶっ壊れるということで、それから先はさわらない。さわらせない。 談志 さわらせないと同時に、どっかで思考をストップしてんじゃないのかなあ、それ以上行くとえらい目に遇うって。つまり保安策。 西丸 恐怖心があるから踏み出せない。 談志 でしょうなあ。だから逆に言うと怪談は思考ストップじゃないんだ、科学のもっと先をやってることになる。 西丸 そう思いますね。 -----------その幽霊と付き合ってた期間はどのくらいですか。 西丸 昭和21年の4月に赴任をして、6月頃から翌年の5月の21日が最後。 談志 はー、それきり出なくなったの? 西丸 いや、実はその途中で僕がいったんは逃げたんです。だって僕のねぐらに毎晩やってきては一晩じゅう立ってるから、気分悪いし集中できないし寝不足にはなるしでかなわないから、本館の講堂の一角に衝立を立てまわして寝床を作ってそこに移住したの。そうしたらしばらくは来なくなった。 談志 幽霊は先生に嫌われたから来なくなったんじゃないの(笑)。 西丸 いや、僕のほうがまいっちゃったから逃げたんです。ところが向こうも調べたらしくて(笑)、まずいことに衝立の内側に出ちゃった。おかげで目と鼻の先から見下ろされて、まいったなぁと思ってね。 談志 その幽霊の容貌はどうでした? 西丸 ぼくの趣味じゃないけれども、細面で鼻筋通って長ーい顔。鄙には稀な美人ですよ。 談志 毎晩大体何時頃までいるんですか? 西丸 夜が白々明けてくると消えるんです。 談志 そうすると、落語の『へっつい幽霊』なんか合ってるんだね、幽霊が「はやいとこ勝負しないと、あっしは夜が明けると消えなきゃならないから」なんて言って博打やるけど。 西丸 そうでしょ。実際の経験でそういう話ができてるんだと思う。 談志 落語はその頃の江戸と江戸近郷含めた状況、職業だとか恋と嫉妬だとか、行事だとか仇討ち、それにいろんなシステムまでが全部題材になってますけど、幽霊の話が非常に多いんです。『三年目』『へっつい幽霊』『反魂香』『幽女買い』『野ざらし』『応挙の幽霊』『質屋庫』.....それから例の八百屋のお七の幽霊が出てきて、それを侍が斬っちゃうっていう『お七』って噺があるんですがね、片腕斬って、もう片腕斬って蹴上げてくる片足を斬っちゃうんで、かなわないってんでお七の幽霊が逃げるんです。で、「どこ行くんだ」って言うと「かたあしゃ本郷へ行くわいな」ってね(笑)、いい下げでしょ。ここまでばかばかしいといいやね。 それから『お化け長屋』だとか『不動防火焔』だとか、人間が幽霊ンなって脅かそうなんてェ落語もある。だけど、実際に出てくる噺のほうが多いですな。 西丸 実際、出てたんでしょう、当時は。 |