志らくのピン

12月16日国立演芸場立川志らく・らく平、らく坊




 まるで何でも屋である。昔から欲張りで色々なものに手を出す方ではあったが、最近はちと異常だ。
「志らくさん、そんなに急いで何処行くの?」と楽屋雀が笑っている。口の悪い奴になると「志らく(あいつ)も癌じゃねぇのかい」
 来年早々、芝居だ。現在(いま)、東京喜劇で一番面白いと私が思っている「うわの空藤志郎一座」とのジョイント。私の脚本(ほん)で村木藤志郎の演出。過去、私もコントや喜劇を随分とやってきた。平成名物TVヨタロー、立川ボーイズ、らくご奇兵隊、史上最強プロジェクト、ひとり舞台等。威張るわけではないが、全部演出は私がやった。だけど今回は村木藤志郎に任せた。それだけ彼を信用しているという証拠である。まだ、彼とは出会って半年足らずだが、何だか昔から仲が良かった気がする。恐らく前世で一緒になにかやっていた同志だったのではないか(おわい屋仲間だったりして。だって臭い仲だもの)。
 二人の共通点は「我こそ一番」という己への過信。世の中で自分が一番才能があると思い込んでいる。こんな自信過剰な二人が手を組んだのだから、目標はただひとつ、「天下を取る事」である。談志が信長でビートたけしが秀吉ならば、我々は家康と光秀だ、ってそれじゃあ光秀はすぐに死んじゃうじゃねぇか(村木さん、あんたが光秀ね)。まあ、客観的に見れば、この二人、ほとんど病気だ。近寄らない方がいいのかも知れない。

 芝居の公演日は来年の一月三十日から二月一日の三日間、六回公演。百五十人のキャパの小屋だから九百人しか見れない計算になる。藤志郎一座の固定客が五、六百人いるから、私の客は三百人ぐらいしか見れない。だから早くチケットを買ってねってこと……何だい、会の宣伝かい!
 「宇宙日和」、我ながら面白い脚本が書けやした。あとは村木藤志郎の演出次第、て大変なプレッシャーのかけ方だなぁ。
 で、この芝居が終わったらすぐに映画でござんす。二月七日、「異常暮色」に次ぐ私の監督第二作がいよいよクランクイン。題名は「死神パラダイス」。前作ははっきり言って後悔だらけ。評判もあまり芳しいものではなかった。
 リベンジである。今回はラブストーリーです。それも古き良き時代のラブストーリー。設定は勿論現代だが、登場人物の感覚が発展途上の頃の日本人なのだ。あの頃の日本人って素敵だったんじゃない?というのが「死神パラダイス」のテーマ。同じ死神を扱っているブラピの「ジョーブラックによろしく」より間違いなく面白いぞ、うひゃひゃひゃひゃ!(ほとんど狂人)
「死神パラダイス」はヒロインがいいよ。野田よし子、サントリーCMで長塚京三と一緒に出演していた、「部長の背が…」のあの女優だ。私、この脚本は大好きな薬師丸ひろ子をイメージして書いた。彼女にも読んでもらい、「キャプラのようね」というお言葉をいただき、有頂天になっていた。だって薬師丸ひろ子はキャプラ好きなんだもの。で、調子づいて出演してくんなましと交渉したら事務所にていよく断られてしもうた。脚本が面白くなかったのか、「異常暮色」に呆れ返ったのか、それとも志らくに魅力がなかったのか…。
 で、傷心を癒す旅に出た私は(何のこっちゃ)、この脚本はおくら入りだなと思っていたのだが、そこに現れたのが野田よし子である。彼女の声のトーンと横顔の優しさが私の創造力をかきたてた。脚本をあれよあれよと書き直し、そしてついにクランクインとなったのであります。
 彼女はVシネマで艶っぽいものなんかもやったりしているが、いやいや、邦画黄金時代の女優の色を持っております。
 撮影はあの「鬼畜大宴会」の橋本清明、録音が「いつものように」けんもち聡監督、脚本アドバイザーは「マヌケ先生」の内藤忠司監督、自主映画にしては贅沢すぎるね。
 公開は来年の夏になる見込み、乞う御期待!

 あと来年の七月に出版を目指して志らくの落語論を執筆しております。新潮社から出す予定だが、これがなかなか大変。私には元来、論があまりないのです。感覚だけ。だから書いても論文になりゃぁしない。論がないくせに言いたい男なのでただただ生意気なだけ。でも言っていることが間違っていないだけに始末が悪い。まあ、現在、私が落語をどうとらえているか分かってもらえれば成功ってとこか…。
 でね、問題の落語だ。今回は談志の十八番(おはこ)に挑むと銘打ってプログラムを組んでみたが、どうなることやら。
 志らく落語はジェットコースター落語だなんて言われているが、意識的には談志の演目は避けてきた。愛情が深すぎて自分の作品にならんのです。でもいつまでも避けてはいられない。とにかくやってみようというのが今日の会。うーん、芝浜ねぇ、師匠のは凄ぇからなぁ…。あっ、そうだ、今回は十八番に挑むんだが、お正月には師匠との親子会もあるんだった。今度は本物に挑まねばならないのだ。戦うね、私。まるで戦士だ。ベルリン戦士の詩なんてね…どひゃーん! 

立川志らく








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